あまりかたちのわからないもの

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産業としての大麻栽培2


前回の記事のつづきを。

前回の記事では大麻に対する認識を改める必要があるのではないかという提起をさせていただいた。

 

 

大麻の有用性

こうして論じてきて、じゃあ大麻の何がいいの?って思うのは自然なことだろう。

前述の厚労省発信のパンフレットには「大麻は可能性を秘めている」というのはただの謳い文句だと主張しているが、本当のところ、それはどうなのだろうか。


1.自然環境を汚さない

2.汎用性が高い

 

だいたいこうだろう。

 

1つ目はやはり、植物として純粋に素晴らしいものであるということ。


農業をする上で土壌はすごく大事で、いくら良質な土壌であっても、また、良質な土壌にするために何年もの努力を積み重ねたとしても、たった1回の農薬散布によってその努力は水の泡となる。それぐらい農薬は強いものだし、土壌は敏感なものだ。

そして、輪作にもあるように、土壌環境の悪化を防ぐことが効率的な農業にとっては重要なのである。


大麻栽培は、その点で有益である。根ごと引っこ抜くことができるために、その後の土壌を柔らかくするため輪作に向いている。また、化学肥料によって悪化した土壌の改善を促す効果も得られている。北海道北見市の実験によれば、大麻の栽培は、過剰な化学肥料の使用によって地中に残留した硝酸性窒素の削減に貢献するという。

この実験では、化学肥料の使用を前提にした土壌改善を調べたものだが、そもそも化学肥料に頼らずに野菜を栽培することが理想である。

 

その点では、大麻栽培には農薬や化学肥料を必要としない。大麻は基本的に生育に場所を選ばない植物と考えられ、グリーンランド、北極南極を除いて地球全ての地域での栽培が可能だと言われている。ちなみに日本でも全然までは普通に栽培をしていたという話は、その時代を知る人に話を聞けば、簡単に知ることができよう。


無農薬で良質な大麻を栽培可能にする理由としては、株間の距離を短くすることで真っ直ぐな茎に育てることができ、虫が畑の中に入りづらくすることがまず挙げられる。また、畑の中に風が入りにくいため細い茎でも真っ直ぐ育つ。そして日が当たらない部分は葉も付かず、茎の中も柔らかいまま生育することで良質な繊維をとることができる。

 

2つ目は汎用性が高いということ。つまり大麻は麻薬だけではないということだ。大麻は色々なものに化ける。建材や断熱材、塗料、ヘミセルロースプラスチック、メタノール、ガソリン、紙、ロープ、注連縄など神事に使われるもの、宗教儀式、衣類、食用油、治癒薬、鎮痛薬、など、とにかく幅広く応用が効く。

 


紙としての大麻

繊維をとった後に残留する茎の中心部は「ハード」と呼ばれ、これにはセルロースが含まれる。これを有効利用することで紙を作る際の森林伐採の必要性が解決され、かつ、ダイオキシンを含有しない上質紙を作ることができる。また、0.4ヘクタールの大麻畑が紙の原料となる時、約2ヘクタールの森林が救われると言われている。

1883年までは世界中の紙の75~90%が大麻を原料とし本や、債券、新聞、聖書など様々なものに使われた。有名な話だが1776年のアメリカ独立宣言の草案の紙も大麻由来だ。

 

燃料としての大麻

さて、石油燃料に頼らざるをえない現代社会なわけだが、そうじゃない選択肢も当然ある。近年ではバイオマス燃料とか言って、農作物の廃棄や家庭生ゴミから変換したエコな燃料として話題を集めているが、大麻も燃料を作ることができる。

 1941年にアメリカのフォード社がヘンプオイルで走る車を開発した。フォードはこの時代にすでに大麻の茎から採った成分でエタノールを作り出し燃料とし、車体にも大麻由来のプラスチックを導入していた。恐るべしフォード。

現在はイーロンマスク氏が経営する米テスラが完全な電気自動車を開発し販売までしているが、まだまだ多くの国で導入するには課題が多い。ヘンプオイルは圧搾機が個人で所有することができ、それで車が走るのだから、充電箇所が未だに不十分な電気自動車よりも可能性があるかもしれない。自分の家の庭で大麻が栽培できる時が来れば、自家栽培大麻で作ったオイルで自家用車が走る。こんなにサステナブルに完結する移動手段はないのではないか。

そして特に重要な点は排気ガスの排出による環境汚染が圧倒的に少ないことだ。化石燃料はすでに死んでいる(絶滅種)が、バイオマスは生きている植物由来であるため成長過程において光合成をし二酸化炭素を削減する。加えて、バイオマス燃料は硫黄を排出しない。

 

食用としての大麻

日本では意外と知られていないが、日本人だって大麻の一部を無自覚に摂取している。なんだなんだと思うかもしれないが、それは「麻の実」だ。これはたいてい加熱処理され新芽がでない状態になってから輸入され、我々の口に入る際には、あの七味唐辛子の一味として大活躍している。

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画像はwikipediaより

 

知らない間に食べているんである。無自覚に触れているんである。こういった事実に気づいて、すこし考えてみることをお勧めする。そして少し調べてみて、その可能性について知っていったらすこし世界変わるかもしれない。

 

その他にヘンプシードナッツと言われる麻の実ナッツや、そこから油を抽出したヘンプシードオイルなどがある。引用しちゃいましょう。

 

必須脂肪酸は油の中に含まれている栄養素で、人の体の中では作ることができないので、食べ物から摂取する必要があります。私たちが生きていく上では無くてはならない「必須」な栄養素です。 ヘンプシードオイルには、人間の体に必要な必須脂肪酸の含有量が約80%。植物油の中では最も多い含有量であるといわれています。主に「リノール酸(オメガ6)」、「α-リノレン酸(オメガ3)」と呼ばれる脂肪酸が豊富に含まれています。 健康と美容を保つために必要な必須脂肪酸は、バランスよく摂ることが大切ですが、WHO(世界保健機関)や厚生労働省が推奨するリノール酸とα-リノレン酸の割合が4:1なのに対し、ヘンプシードオイルに含まれるリノール酸とα-リノレン酸の割合は3:1と、非常に理想的な割合となっています。 スプーン1杯で1日に必要なオメガ3が摂取できるというわけです。 さらに、ヘンプシードオイルには天然の食用油の中で非常にめずらしい「γ- リノレン酸GLA)」を含んでいます。そして、欧米では深刻な問題とされているトランス脂肪酸はゼロですので、とってもヘルシーなオイルです。

栄養価について | Hemp Foods Japanより引用

 

ヘンプシードオイル欲しくなってきたでしょう。

 

ちなみにヨーロッパでは大麻の種子は釣りエサとして大人気らしく、種子をばら撒き水面に浮かんでくる魚たちを釣るのだと言う。また、日本では1937年の大麻取締法の制定前までは鳥のエサとしても実に活躍していた。大麻の種子を他のエサと一緒に混ぜて餌付けをすると面白くもその種子から選別して食べ始めるのだと言う。

 

 

大麻の医療効果
医療の面についてはここでは議論はしないが、記しておく。なぜなら、個人的には医療大麻や嗜好品としての大麻には興味がなく、単純に環境に対して効果を発揮する産業用大麻についてだけ考えているからだ。ただ、医療効果やリラックス効果が得られるとの説もあり、無視することはできない。みんなが知っている鎮痛薬としての役割の他に、緑内障や癌、嘔吐、エイズの治療にも効果を発揮すると言われている。

 

つづくかも